2022.07.07
学長メッセージ

学長メッセージ(その4)

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こんにちは。学長メッセージの(その4)です。今回も二つ発信します。

その1 「多種多様な文化的フック」
 去る6月20日の月曜日、大阪の梅田新道にあるザ・フェニックスホール「相愛ソロイスツ2022」へ行ってきました。午後7時からの開演でした。
 「相愛ソロイスツ」は、相愛大学音楽学部の先生方の演奏力を学外に知っていただくと同時に、リハーサルは学内で学生を前にして行い、演奏指導も兼ねるという秀逸な企画なんです。

【相愛ソロイスツ2022】
田辺 良子、大谷 玲子(以上、ヴァイオリン)
竹内 晴夫、小峰 航一(以上、ヴィオラ)
斎藤 建寛、上森 祥平(以上、チェロ)
▼ブラームス:弦楽六重奏曲 第1番変ロ長調 op.18 
▼ドヴォルザーク:弦楽六重奏曲 イ長調 op.48, B.80
▼チャイコフスキー:弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」ニ短調 op.70
 
 いやあ、すごい。二時間余り、最初から最後まで、ひと言のお話もなく、ひたすら演奏。それが、あっという間よ、ほんと。退屈する間なんて無いからね。圧倒的な演奏なんですから。このレベルに至るまで、各人がどれほどの修練を積んできたのか、想像するだけで胸が熱くなります。それにしても、チャイコフスキーってすごいね(←よくわからず発言している......)。
 ザ・フェニックスホールもいい。大阪屈指の室内音楽ホールだそうだ。梅新交差点のところにあるんだけど、すごく工夫されたホールだ。演者との距離も近い。少しラフな雰囲気でクラッシックコンサートを楽しむことができる。実際、今回の演奏はとても魅力的だった。
 これも大阪に伏流している文化的ポテンシャルだと思うな。伏流しているポテンシャルなどと表現したのは、そんなに目立っているわけじゃないからなんだけど。
 かつて大阪(大坂)は、多様多彩なフック(引っ掛かり)がある地域だった。幕末の志士たちは、中国・四国・九州方面から江戸へ向かう途中、大坂に寄るとどうしても長逗留になってしまったらしい。大坂には、知識人・文化人のサロンや、アートや芸能など、さまざまな拠点があったので、そこに引っ掛かってしまって、なかなか旅立てないのである。
 今の大阪に、老若男女の足をとめる魅力的なフックがどれほどあるだろうか。
 大阪は、最近喧伝されがちな「選択と集中」は合わない気がする。大阪が得意なのは、雑多で猥雑な知性と、生活に根差した底力の強い文化である(抽象的で申し訳ないが、伝わる人はいると思う)。それに本来、もっと宗教性も豊かなのだ。私は大阪人の本質を「信心深い合理主義」だと考えている。目覚めよ、大阪の宗教文化。
 いまだに「粉もん」とか「お笑い」とかの印象ばかりが強い人もいるだろう(どっちも好きだが......)。クラッシックだって、伝統芸能だって、現代アートだって、しっかりあるぜ。
 あと、やっぱり船場文化を考えねばならないか。これは相愛大学も一翼を担うつもりでいるのですが。今後の課題にします。


その2 「夏至・冬至問題」
 ここ数年、夏至になると「これから徐々に日が短くなるので寂しい」、冬至になると「これから日が長くなっていくのが嬉しい」と、SNSに書いています。ですから、今年の夏至前には、ツイッターに「釈先生、そろそろ夏至ですね。また気分落ち込みますね」などといった書き込みがきた(笑)。
 この発言が変なのは自覚しているんです。なにしろ、実際には夏至の頃は日が長く、冬至の頃は実際日が短いわけですから。それなのに、日が長いのを熱烈に好んでいる私が、夏至にがっかりして、冬至を喜んでいるのは、明らかに体感に反しています。体感と認識とがねじれているんです。「今、この時点を喜ぶ」のではなく、「これから起こることに一喜一憂」しているわけです。
 これはよくありませんね。反省しました。これから「夏至は寂しい」とSNSに書き込むのは、やめます。でも「冬至だ、わーい」というのは、もう少し書いていこうと思います(←どういうことやねん)。

学長 釈 徹宗
2022年7月7日

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